クトゥルフ神話
クトゥルフ神話は、H・P・ラヴクラフトの作品を基盤とし、オーガスト・ダーレスら後継作家によって整理・拡張された現代ファンタジー体系であり、宇宙的恐怖、禁忌の知識、旧支配者、名状しがたい古き存在を核心とする。...
賢者バルザイは、人間は決してドリームランドの大いなるものを見てはならないという掟を信じず、弟子のアタルを伴って禁断の峰ハテグ=クラへ登る。だが頂で彼が見たのは、想像していた穏やかな神ではなく、彼らを守る外なる神々だった。やがて残されたのは、ただひとり人間界へ逃げ戻ったアタルだけである。
民族学者がオクラホマに赴き、蛇神イグの伝承を追う。だが精神病院で耳にしたのは、開拓民一家を襲った恐怖と誤殺の果てに、狂気の生存者と説明しがたい子孫だけが残された、痛ましい昔話だった。
ボストンの博物館に、太平洋の孤島で見つかった奇妙なミイラが収められた。だがそれを狙う秘かな崇拝者たちの動きから、館長は、その干からびた身体がただの遺物ではなく、太古ムー大陸の祭司の成れの果てであることを知る。しかもそれは、長い眠りのうちに死に絶えたのではなかった。
ミスカトニック大学の学生ウォルター・ギルマンは、アーカムの幽霊屋敷めいた屋根裏に移り住み、数学で魔術と異界を解き明かそうとする。だが夢は次第に現実へ侵食し、古い魔女の儀式に呑みこまれ、ついには目覚めと夢の境さえ失っていく。
ミスカトニック大学の教授ナサニエル・ウェイト・ピースリーは、ある日突然自我を失い、五年後に目覚める。だが、その空白の歳月には別の意志が彼の肉体を借りて動いていた。夢に現れる太古の都市の正体を追い、彼はついにオーストラリアの砂漠へ赴き、人類の時代にはあってはならない証拠にたどり着く。
貧しい学生が、あとには見つけようのない古い通りへ住みつき、屋根裏で聴こえる口の利けない弦楽師エリック・ザンの奇怪な旋律に耳を奪われる。ザンは窓の外にいる何かを、音楽で押しとどめているように見え、やがて人も曲も闇の中へ消え、学生の心には二度と消えぬ恐怖だけが残る。
クロフォード・ティリンハーストは、感覚を拡張して、ふだん人間の周囲に重なっているもう一つの世界を見せるという奇妙な機械を作り上げる。実験室に招かれた友人は、家の中を見えざる生き物が泳ぐように通り過ぎるのを目の当たりにし、その招待が学説の証明ではなく、復讐のためだったことを知る。
金星の密林で、晶体会社の探鉱員ケントン・J・スタンフィールドは探知器の示すままに巨大な結晶へ辿り着くが、そこで見えない壁だけで組み上げられた迷宮に迷い込む。水も酸素も尽きるなか、彼は人間が獣と見なしていた金星の住民が、この罠を仕掛けた真の知性であると悟る。
アメリカ南西部の古い塚の下には、人類の歴史よりもはるか以前から続く地下王国が隠されている。探検家サマコナはその奥で、驚異的な知識を持ちながら人間性を失った地下の住人たちに出会う。地上へ逃げ戻ろうとしたとき、塚の秘密もまた地上へ追いすがってきた。
ある画家が、なぜ突然芸術界から距離を置いたのかを友人に語る。彼はリチャード・アプトン・ピックマンに連れられ、ボストン北部の荒れ果てた古い家へ足を踏み入れた。そこで目にした恐ろしい光景は、普通のモデルから描けるものではなかった。ピックマンが失踪した後、画家が持ち帰った一枚の写真は、あの怪物たちが画家の妄想ではなかったことを証明する。
幼いころから暗い古城で育ったひとりの者が、ついに朽ちた塔をよじ登って外の世界へ出る。だが、明るく灯のともる集いの場で目にしたのは、自分自身の本当の姿だった。真実を悟ったとき、光も人々もすでに彼を戸外へ押し戻しており、彼に残されたのは、ふたたび闇へ退くことだけだった。
新英格ランドの荒れた山道で雨に追われた旅人が、森の奥の古びた家に逃げ込む。そこにいた年老いた住人は、古書のなかの残酷な挿絵に異様な執着を見せる。やがて会話は恐るべき深みに落ち、屋根から血が滴り、雷が老屋を撃つ。