
ギリシア神話
モリュはギリシア神話で、ヘルメスがオデュッセウスに与えた神草であり、キルケーの魔薬を防ぐためのものとされる。別称はモリー、神草モリュ。植物であると同時に、護符としても扱われる。
モリュの起源を明確に説明する物語はない。主な登場は、オデュッセウスがキルケーの館へ向かう前の場面である。ヘルメスが道中に現れ、神草を手渡して、キルケーの薬酒の前でも正気を保てるようにした。モリュはこのため、オデュッセウスの帰郷の旅、ヘルメスの助け、キルケーの魔薬と結び付けられる。
モリュの中心的な力は、キルケーの魔薬を退けることにある。持ち主の心と人の姿を守り、薬酒による変身を防ぐ。攻撃用の道具ではなく、危険な魔術の場で毒や呪いを抑え、交渉や反撃の余地を生む護符として働く。
モリュは神力を帯びた草本植物である。オデュッセウスの漂流譚に登場し、その役割ははっきりしている。持ち主をキルケーの薬酒から守り、心を奪われたり姿を変えられたりするのを防ぐ。
《風の袋、ライストリュゴネス人とキルケー》では、オデュッセウスの仲間がキルケーの魔術で豚に変えられる。エウリュロコスが船へ逃げ戻って報せると、オデュッセウスは一人で救出に向かう。途中でヘルメスが、魔薬を退ける神草を渡し、さらにキルケーに二度と害を加えないよう誓わせる方法を教える。オデュッセウスはその通りに行動し、キルケーは術を解いて仲間を人の姿に戻した。
《風の袋、ライストリュゴネス人とキルケー》には、「ヘルメスが草を与え、オデュッセウスが魔薬を防ぐ」という筋が明確に残っている。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』第10巻では、この草はモリュと呼ばれ、根は黒く、花は白いとされることが多い。凡人には抜き取れないが、神々は手にできると描かれる。後世の伝承では、モリュは魔術、眠り薬、変身の術を防ぐ護符植物として語られることが多いが、対応する現実の植物については一致した説がない。