
ギリシア神話
クロノスは神々の王座を守ろうとして、自分の子どもたちをのみ込んだ。やがて成長したゼウスは兄弟姉妹を救い出し、地下に囚われていた強大な神族を味方につけ、ティタン神族との戦いに臨む。十年に及ぶ大戦の末、雷霆と巨石、そして百腕巨人の力が古い神々を圧倒し、ティタンたちはタルタロスへ閉じ込められ、新しい神々がオリュンポスへ上った。
クロノスは、自分の子に王座を奪われることを恐れ、レアが産む子どもを一人ずつ腹の中へのみ込んでいった。レアは末子ゼウスだけをひそかに守り、隠して育てる。成人したゼウスは、クロノスにのみ込まれていた子らを吐き出させ、ポセイドン、ハデス、ヘラ、デメテル、ヘスティアはふたたび光のもとへ戻った。兄弟姉妹が一つに集まったとき、古い神々と新しい神々の対立は、もはや隠しようのないものとなった。
クロノスが神々の上に君臨していたころ、その胸の内は少しも安らかではなかった。
かつて彼は鎌を手に、父ウラノスを退けて王座を奪った。けれども彼自身もまた、一つの予言を聞いていた。いつの日か、自分の子が自分を王座から追い落とすというのである。その言葉は、冷たい石のように彼の胸を圧しつけた。レアが子を産むたび、クロノスは母の腕から赤子を奪い、ろくに顔も見せぬまま、そのままのみ込んでしまった。
ヘスティアがのみ込まれた。デメテルがのみ込まれた。ヘラがのみ込まれ、ハデスもポセイドンも同じ運命をたどった。レアは子を産むたびに、その子を失った。宮殿には赤子の泣き声も、揺りかごのかすかな音もなかった。ただクロノスの沈黙だけが、しだいに重くなっていった。
末の子が生まれようとしたとき、レアはもう耐えられなかった。彼女は大地の女神ガイアにすがり、深いところにいるウラノスにも助けを求めた。二柱はレアに教えた。子をクレタ島へ運び、ひそかな洞穴で産むがよい。そして石を一つ産着にくるみ、それをクロノスへ渡すのだ、と。
レアはそのとおりにした。子が生まれると、彼女は父の目の届かぬ深い洞穴にその子を隠した。それから、布にくるんだ石を腕に抱き、クロノスの前へ戻った。クロノスは中を確かめもしなかった。彼が恐れていたのは子が生きていること、予言が現実になることだけだった。彼は口を開き、その産着の包みをのみ込んだ。
石はクロノスの腹の底へ沈んだ。しかし本当の子は、クレタの山中の洞穴で少しずつ成長していった。その子こそ、ゼウスであった。
大きくなったゼウスは、もはや洞穴に隠された赤子ではなかった。彼は、自分の兄弟姉妹がまだ父の腹の中にいることを知っていた。また、クロノスが自ら王座を譲るはずもないことも知っていた。すべてを変えるには、まず、のみ込まれた神々を救い出さねばならなかった。
古い伝えの一つでは、ゼウスは助けを得て、クロノスに吐き気をもよおさせる薬を飲ませたという。クロノスは、危険がすでに身近に迫っているとは思いもしなかった。薬を飲むと、腹の中が激しくうねり、ついに彼は、のみ込んだものを一つずつ吐き出しはじめた。
最初に出てきたのはあの石だったとも、別の語りでは石は最後に吐き出されたともいう。いずれにせよ、クロノスがかつて腹へ押し込めたものは、ふたたび光の下へ戻った。長く閉じ込められていた神々も、そのあとに続いた。彼らは人間のように闇の中で死んでいたわけではない。神はたやすく滅びない。父の腹から逃れた彼らは、それぞれの力を失わぬまま立ち上がった。
ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドンはゼウスのそばに並んだ。かつて彼らには泣き声をあげる間さえ与えられなかった。いま、ようやく互いの姿を見ることができたのである。クロノスは、ふたたび現れた子どもたちを見て、予言がすでに戸口を越えて入ってきたことを悟った。
このときから、古い世代のティタンたちとゼウスの側は、もはや同じ席にいることができなくなった。クロノスは進んで王座を手放すつもりはなかった。ゼウスもまた、洞穴へ戻るつもりはなかった。戦いは、すぐそこまで迫っていた。
クロノスは、自分に従うティタン神族を呼び集めた。彼らは天地が開かれて間もないころに生まれた、古く強大な神々である。長く高みに座り、世界が自分たちの歩みに従うのを見慣れていた。多くのティタンはクロノスに味方し、オトリュスの高山のあたりへ集まった。
ゼウスの側はオリュンポスへ上った。峰は高くそびえ、雲が岩壁のあいだを流れていた。若い神々はそこで、父たちの世代の力にどう立ち向かうかを語り合った。ポセイドンは激しい気性を持ち、ハデスは深く沈黙していた。ヘラ、デメテル、ヘスティアもまた、この争いが数言で収まるものではないことを知っていた。
すべての神がクロノスの側についたわけではなかった。大洋の神オケアノスは、戦いにおいてティタンたちを積極的に助けなかった。さらに重要なのは、ステュクスの女神が、自分の子どもたちを連れていち早くゼウスのもとへ来たことである。その子らの中には、勝利、力、強い勢い、熱情といった神的な力がいた。彼らはオリュンポスに来て、ゼウスのそばに立った。ゼウスはこの最初の支援を忘れなかった。のちに彼は、神々がステュクスの水にかけて誓うよう定め、ステュクスに神々のあいだで大きな栄誉を与えた。
しかし、味方があってもなお、戦争は苦しかった。
ティタンたちは尋常な敵ではない。体は大きく、力は古く、彼らが歩むたびに谷は震えた。ゼウスと兄弟姉妹は若かったが、それでも退くことを拒んだ。両軍は天と地のあいだでぶつかり合い、雷鳴、叫び、衝撃の音が高みにも深みにも響き渡った。
この戦いは十年続いた。
十年のあいだ、どちらの側も相手を決定的に打ち倒すことはできなかった。オリュンポスの新しい神々は何度も山を駆け下り、オトリュスのティタンたちもそのたびに反撃した。大地は踏み裂かれ、岩は転げ落ち、煙と塵が空を覆った。昼は火に焼かれたように暗くなり、夜にも安らぎはなかった。
戦いがあまりにも長く続くうち、ゼウスは悟りはじめた。いまある力だけでは、まだ足りないのだ。
そのときガイアが彼に告げた。勝利を望むなら、地下の奥深くに囚われている強者たちを解き放たねばならない、と。それはウラノスとガイアの子である単眼の巨人キュクロプスたち、そして百腕巨人たちであった。
キュクロプスたちは額の中央にただ一つの目を持ち、その眼差しは洞の奥で燃える火のようだった。彼らはかつてウラノスに忌み嫌われ、またクロノスによっても閉じ込められていた。百腕巨人はさらに恐ろしかった。五十の頭と百の腕を持ち、山をも持ち上げるほどの力を備えていた。彼らもまた、光から遠ざけられ、長く闇の中に縛られていた。
クロノスはこの兄弟たちの力を恐れ、決して解放しようとはしなかった。だがゼウスは違った。彼はガイアの助言に従い、大地の深みへ降り、彼らを閉じ込めていた場所を開いた。
地下の牢には日の光が届かず、空気は重く淀み、長い歳月のあいだ一度も動かなかったかのようだった。キュクロプスたちと百腕巨人たちは、そこで果てしない苦しみに耐えていた。ゼウスは空々しい言葉で彼らを買収したのではない。自由を与え、さらに神々の食べ物と飲み物を与えて、彼らの力をよみがえらせた。
解き放たれた強者たちは、その恩を忘れなかった。
キュクロプスたちはゼウスのために雷霆と稲妻を鍛え、ポセイドンのために大地を揺るがす三叉の矛を作り、ハデスのために姿を隠す兜を作った。百腕巨人たちもオリュンポスの側に立った。彼らに華麗な武器は必要なかった。彼ら自身の腕こそが、もっとも恐るべき武器だったからである。
戦いの天秤は、ついに傾きはじめた。
最後の大戦が訪れたとき、天も地も、ともに戦場の中央へ押し出されたかのようだった。
ティタンたちはオトリュスから押し寄せ、古い神々の咆哮は山風を呑み込んだ。彼らは長く支配に慣れきっていた。自分たちが後の世代と見なす神々に、高みから追い落とされるなど信じていなかった。クロノスはその中心に立ち、なおも王座を守ろうとしていた。
ゼウスはオリュンポスから立ち上がった。彼の手は、もはや空ではなかった。キュクロプスたちが与えた雷霆が掌の中で燃え、稲妻は白い蛇のように腕へ巻きついていた。彼のまわりで雲が渦を巻き、空は暗くなり、すぐにまばゆい光によって引き裂かれた。
ゼウスは最初の雷霆を投げ下ろした。
雷の火は大地を打ち、谷は昼のように明るくなった。森は炎を上げ、岩は砕け、煙はまっすぐ空へ立ちのぼった。ポセイドンが三叉の矛を振るうと、大地は足もとで震えた。ハデスは姿隠しの兜をかぶり、混乱の中を現れては消え、敵に備える隙を与えなかった。
しかし最も恐ろしかったのは、百腕巨人たちが戦いに加わったその瞬間だった。
彼らはゼウスの側に立ち、五十の頭でいっせいにティタンたちを見据え、百の手で巨岩をつかみ上げた。一つではない。十でもない。次から次へと、絶え間なくである。彼らは地から岩を引きはがし、豪雨のように古い神々へ投げつけた。岩塊は空を唸りながら飛び、光を遮り、盾に、肩に、山腹にぶつかって、耳をつんざく轟音を立てた。
ティタンたちの陣は乱れた。上からは雷霆が落ち、前からは巨石が飛び、足もとでは大地が揺れていた。十年の戦いの中で、彼らはこのような攻勢を見たことがなかった。古い神々の力はなお恐ろしかった。けれども、もはやこの包囲に耐えることはできなかった。
ゼウスは稲妻を投げ続けた。空は赤く焼け、大地は轟き、遠くの海までも泡立った。伝えによれば、そのときタルタロスの深みにまで震動が届き、まるで天地の根が揺さぶられたようだったという。
ついに、ティタンたちは敗れた。
敗れたティタンたちは、もはや明るい世界にとどまることを許されなかった。ゼウスは彼らをタルタロスへ連れて行かせた。
タルタロスは大地の最も深いところにあり、闇よりもなお暗い。天から青銅の金床を落とせば、それが大地へ届くまで長い昼と夜がかかる。さらに大地から下へ落とせば、同じだけの時を経て、ようやくタルタロスにたどり着くという。そこは世界の底に開いた深い井戸のような場所で、風からも光からも、神々の宴からも遠く離れていた。
ティタンたちはそこへ閉じ込められた。青銅の門は閉ざされ、敷居は堅く据えられた。百腕巨人たちが番人となった。かつて古い神々に幽閉されていた彼らは、いまや門前に立ち、ゼウスのために敗れた囚人たちを見張った。深みから抜け出そうとする者がいれば、まず百の腕の力に立ち向かわねばならなかった。
ただし、すべての古い神々が同じ罰を受けたわけではない。反逆に加わらなかった者、あるいは戦いの早い時期にゼウスの側へ立った者には、それぞれの場所が残された。だがクロノスと主だった反抗者たちは、かつての高い地位を失った。
アトラスもまた重い罰を受けた。彼は大地の果てに立ち、肩と頭で重い天空を支えることになった。それはしばらくの労役ではなく、長く続く刑罰だった。彼はもはや昔のように自由に歩き回ることはできず、遠い果てで天穹を支え、天と地がふたたび重なり合わぬようにしていなければならなかった。
戦争が終わると、天地のあいだにようやく静けさが戻った。
オリュンポスの山頂は、もう戦火に赤く照らされてはいなかった。ゼウスとその兄弟姉妹は勝利の後に立ち、世界を分けて治めはじめた。ゼウスは空と雷霆を司り、ポセイドンは海を得、ハデスは地下の冥府を得た。大地と高きオリュンポスは、なお神々がともに行き来する場所であり続けた。
クロノスは子どもをのみ込むことで予言から逃れようとした。けれども彼が恐れれば恐れるほど、その子らを反抗へ押しやった。レアが隠したあの赤子は、いまや雷霆の主となった。闇に押し込められていたキュクロプスたちと百腕巨人たちも、ふたたび光を見たことで、戦いの結末を変えたのである。
こうしてティタンの時代は沈み、オリュンポスの神々の時代が始まった。タルタロスの青銅の門は固く閉ざされ、百腕巨人たちは深みに立って見張り続けた。そして高山の上では、ゼウスが雷霆を握り、新しい世代の神々の王となった。