
ギリシア神話
オイディプスがテーバイを去った後、二人の息子は交代で王位に就こうとする。だがエテオクレスが約束を破り、ポリュネイケスは町を追われる。
オイディプスが去った後、ポリュネイケスとエテオクレスは傷ついた王家と一つしかない王座を受け継ぐ。二人は交代でテーバイを治めると約束するが、権力に慣れたエテオクレスはそれを手放さない。ポリュネイケスは怒りを抱いて町を去り、家族の争いは大きな戦争の種となる。
テーバイの王宮は、かつては人の出入りも多く、にぎやかな場所だった。高い石壁の内側には祭壇があり、石段があり、門の脇には衛兵が立っていた。城外からは牛や羊、酒樽までもが運び込まれ、王の館には日ごとに声が満ちていた。
だが、オイディプスの災いが白日のもとにさらされてから、その館には重い影が落ちた。
オイディプスは、自分が知らずに実の父を殺し、母イオカステを妻にしていたことを知った。イオカステは屋敷の中で自ら命を絶ち、オイディプスは両目を刺し潰して、二度とテーバイの陽の光を見ようとはしなかった。やがて彼はこの町を去り、そばに残ったのは、ただ娘のアンティゴネーだけだった。
町に残されたのは、二人の息子、ポリュネイケースとエテオクレスである。
二人とも王家の血を引き、自分に王位を継ぐ資格があると知っていた。だが、ひとつの王座に同時に二人が座ることはできない。テーバイの長老たちも、民衆も、どうか兄弟が城を乱さずに収めてくれるよう願っていた。
そこで二人は相談し、一つの取り決めをした。王権を一年ずつ交代で握る、というのである。最初の一年はエテオクレスがテーバイにとどまって王となり、ポリュネイケースはいったん身を引く。そして一年が過ぎたなら、今度はポリュネイケースが戻ってきて王位を受け継ぐ。祭壇の前で誓いも立てられた。これで争いは収まるはずだった。
だが、冠を頭に載せた者の心は、しばしば誓いよりも強く欲に引かれる。
エテオクレスは王位につくと、父が住んでいた館に入り、そこを自分の宮として使い始めた。朝になれば城門が開く音が聞こえ、役人たちが石段を上って報告に来た。兵士たちは彼に頭を下げ、テーバイの城壁も、穀物倉も、馬小屋も、神殿も、次々と彼の手に収まっていった。
やがて約束の一年が近づくと、ポリュネイケースは使者を送り、交代の時が来たことを告げさせた。だが、エテオクレスは王位を譲ろうとしない。テーバイには自分のような安定した支配者が必要だ、王を一年ごとに替えるわけにはいかない、と彼は言い張った。さらに、ポリュネイケースは長く町を離れていたのだから、いまさら戻ってきて城をかき乱すな、とも言った。
その言葉を聞いたポリュネイケースは、兄に裏切られたのだと悟った。約束どおりなら、自分はテーバイへ戻り、与えられるはずだった一年の王座に就くべきだった。だが城門は閉ざされ、宮殿は自分の権利を認めない。王の衣を着た兄が、帰る道をふさいでいる。
彼は力ずくで踏み込むことはできなかった。テーバイを離れ、アルゴスへ向かったのである。
夜の異国の王宮の前で、ポリュネイケースは流浪者らしい埃を身にまとって立っていた。するとそこには、もう一人の追放者テューデウスもいた。二人はたがいに激しく争い、門前で獣のように取っ組み合った。
その騒ぎを聞いて出てきたのが、アルゴス王アドラストスである。彼は二人の若者を見て、ひとりは獅子のようだ、もうひとりは猪のようだと思った。しかも、かつて神託が、自分の娘を「獅子」と「猪」に嫁がせるだろうと告げていたことを思い出した。
そこでアドラストスは、この二人を家に迎え入れ、娘たちをそれぞれの妻として与えたうえで、失われた故郷を取り戻すための援軍を約束した。
こうしてポリュネイケースは、もはや追われた王子ではなくなった。義父がつき、同盟者ができ、軍勢まで手に入れたのである。
ポリュネイケスは王冠を持たず、兄弟への信頼も失ってテーバイを去った。町の門は背後で閉じた。この時点では、争いにはまだ軍勢も将も戦場の音もない。それは一つの家族の中で破られた約束にすぎなかった。だがテーバイを離れる道はアルゴスへ続き、そこで私的な傷はほかの英雄たちを引き寄せ始める。