
ギリシア神話
冥界はギリシア神話で死者の魂が赴く地下世界であり、ハデスとペルセポネが統治する国でもある。英雄の下降、亡霊との対話、死後の秩序をめぐる物語の中心にある。
冥界は、物語によっては地下の通路から、また別の伝承では大洋の果ての暗い岸からたどり着く場所として描かれる。単独の都市ではなく、入口、川、渡し場、ハデスの宮殿、亡霊の集まる場所、死者の住まいが一体になった広い領域である。
冥界は、死者の魂を受け入れる場として機能する。生者が安易に踏み込むべき場所ではなく、亡霊はここで生前の影のような姿を保ち、特別な祭儀や神意がある場合に限って生者と語ることができる。ハデスは冥王、ペルセポネは冥界の女王として、この地下世界を支配する最も重要な神である。
英雄譚では、冥界は境界を越える行為が試される場所でもある。オデュッセウスは帰路を知るためにテイレシアスを訪ねて冥界へ向かい、テセウスとピリトオスはペルセポネを奪おうとしてハデスの宮殿に閉じ込められる。
冥界の入口は伝承ごとに異なる姿を取る。『オデュッセウスの冥界下り』では、大洋の果てにある暗い岸辺に入口が置かれ、そこにはペルセポネの森や、白楊、実を結ばない柳がある。オデュッセウスはそこで穴を掘って供犠を行い、流した血で亡霊を呼び寄せた。
『テセウスの冥界行』では、冥界は地下の道を通じて入る国として描かれ、闇、川、渡し場、ハデスの宮殿がそこに並ぶ。ハデスは宮でテセウスとピリトオスを迎え、石の座に縛りつけた。のちにヘラクレスがケルベロスを連れて地上へ戻る途中でテセウスを救い出す。
『オデュッセウスの冥界下り』では、オデュッセウスがキルケーの助言に従って大洋の果てへ向かい、冥界の入口で供犠を行って亡霊を招き、テイレシアス、母アンティクレイア、そして複数の英雄の亡霊に会う。
『テセウスの冥界行』では、テセウスとピリトオスがペルセポネを奪おうとして冥界に入り、ハデスに石の座へ閉じ込められる。テセウスはその後ヘラクレスに救出されるが、ピリトオスは冥界に残された。