
ギリシア神話
トロイゼーンはペロポネソス東部のポリスで、テーセウス伝説では彼が生まれ育った場所である。その重要性は、主にアイゲウス、アイトラ、ピッテウス、テーセウスをめぐる王家の継承物語に由来する。
トロイゼーンはペロポネソス東岸にあり、海岸に近く、アテナイとは海路でも陸路を北上する道でも結ばれている。物語では海に面した町として描かれ、山の斜面、オリーブの木、町の外の鍛錬場、外へ通じる城門が語られる。
テーセウス伝説において、トロイゼーンはアテナイ王アイゲウスがデルポイを去ったあとに立ち寄った場所である。当地の王ピッテウスはアイゲウスを迎え、娘アイトラを彼に近づけた。こうしてテーセウスはトロイゼーンで生まれ、母方の祖父ピッテウスの宮廷で育った。
この町には、テーセウスの出自の秘密を示す重要な場所も残されている。アイゲウスは去る前に自分の剣と履物を大石の下に隠し、息子が成長したらそれを取り出してアテナイへ向かわせるようアイトラに言い残した。テーセウスが石を動かし、剣と履物を取り出したことで、トロイゼーンは彼が地方の王族の孫からアテナイの継承者へと向かう出発点となった。
物語の中で、トロイゼーンはアテナイとペロポネソスを結ぶ交通の文脈に置かれている。トロイゼーンからアテナイへ向かうには、海路のほうが速く安全だとされる。一方、陸路では地峡、山道、林、海沿いの断崖、盗賊のいる地域を通らなければならない。テーセウスはトロイゼーンを発つ際に陸路を選び、この町は彼が道中で悪人を退治していく一連の功業の起点となる。
トロイゼーンはヒッポリュトスの伝説とも結びついている。アルテミスは最後に、ヒッポリュトスの名がトロイゼーン一帯で記念され、少女たちが結婚前に髪の一房を切って彼に捧げるようになると告げる。そのためこの地は、テーセウスの青年時代の舞台であるだけでなく、彼の一族の悲劇に関わる追悼の伝統をも伝える場所である。
『テーセウスの誕生と青年時代』ではこの場所が言及される。アイゲウスはトロイゼーンを訪れ、ピッテウスに迎えられ、そこでテーセウスの誕生と父子確認につながる伏線が置かれる。
『父を訪ねるテーセウスの旅』ではこの場所が言及される。テーセウスはトロイゼーンで父の残した剣と履物を取り出し、その後、陸路を選んでアテナイへ向かう。
『アテナイのテーセウス』ではこの場所が言及される。テーセウスはトロイゼーンから来た若者としてアテナイに入り、剣と履物によってアイゲウスに認められる。
『テーセウスとミノタウロス』ではこの場所が言及される。テーセウスはアテナイで育ったのではなく、トロイゼーンで成長し、その後アテナイへ来た人物として説明される。
『テーセウスの即位』ではこの場所が言及される。アイゲウスはテーセウスを思い返す際、彼がトロイゼーンを出発し、大石を動かして証となる品を得た経験を、その身分の背景として語る。
『パイドラーとヒッポリュトス』ではこの場所が言及される。アルテミスは、ヒッポリュトスがトロイゼーン一帯で記念されるようになると予告する。