
ギリシア神話
テーバイはギリシア神話においてボイオーティアに位置する都市国家であり、カドモス、オイディプス家、テイレシアス、そして「テーバイ攻め」の伝承の中心となる都市である。王権の継承、神託、家の呪いが繰り返し展開する舞台であり、「七つの門」をもつ都市として多くの英雄伝説に残されている。
テーバイはギリシア中部のボイオーティア地方にあり、神話では平野と城を築くのに適した高地のあいだに立つ都市として描かれることが多い。カドモスの建都伝承では、その起源は一頭の雌牛が横たわった土地に置かれ、泉、高所のアクロポリス、のちの城壁が語られる。現実の地理では、現代のティーヴァが古代テーバイのあった地域を受け継ぎ、ボイオーティア一帯の重要な町となっている。
テーバイは、ギリシア神話ではまずカドモスが建てた都市である。カドモスはデルポイの神託に従って一頭の雌牛を追い、ボイオーティアにたどり着く。泉のそばでアレスの竜を殺し、その歯をまくと、最初の仲間でありテーバイ貴族の祖先となる五人の「スパルトイ」が残った。都市の高所にあるアクロポリスはカドモスの名と結びつき、テーバイの起源には神託、戦神への血の負債、王族の系譜が重なっている。
その後の伝承で、テーバイはオイディプス家の災厄が展開する主要な舞台となる。オイディプスが都市を去ったのち、エテオクレスとポリュネイケスは王位をめぐって争い、ついにはアルゴス勢と七人の将による攻撃を招く。テーバイの七つの門は、この物語で重要な空間となる。外から来た軍勢は門を攻め、城内では王家と予言者が防衛を協議し、最後には兄弟二人が城門の前で決闘して死ぬ。
テーバイはまた、テイレシアスの予言の伝承とも深く結びついている。包囲戦の物語で、彼はカドモスが竜を殺したことに由来する古い負債を説明し、メノイケウスの犠牲が都市の存亡に関わると告げる。次の世代の英雄たちが攻めてきたときにも、彼はテーバイ人に都市を捨てて退避するよう勧めた。テーバイは単なる戦場ではなく、神意、血縁上の義務、都市国家としての責任のあいだで、王城として繰り返し試される場所である。
神話はテーバイをボイオーティアの土地に置き、その周囲には平野、泉、城を築ける高地があるものとして描く。カドモスの建都伝承に現れる泉は、木立と湿った土地のあいだにあり、竜が守っていた場所である。都市の高所はアクロポリスとして用いられ、のちにカドモスの名と結びつけられた。
「七つの門」は、テーバイのもっとも安定した神話地理上の特徴の一つである。七将の攻撃、メノイケウスの犠牲、兄弟の決闘、次世代の英雄たちによる攻撃はいずれも、城壁、城門、宮殿、神殿、城外の平野を中心に展開する。これらの物語において、城門は軍事上の防衛線であると同時に、王族の対立が宮廷から戦場へ移る境界でもある。
現実の地理では、テーバイはギリシア中部ボイオーティア地方の古代都市と、現代都市ティーヴァに対応する。この場所は純粋な想像上の空間ではなく、古代都市国家、ミケーネ時代の遺構、現代都市への連続性をあわせもつ地点である。
日本語では古代の都市名として一般に「テーバイ」と呼ばれ、英語形に由来する「テーベ」も見られる。現代ギリシアの地名としては「ティーヴァ」と表記されることがある。神話では、カドモスが建てた都市、オイディプス王家の都市、そして「七門の都市」として現れる。
テーバイは英雄時代の物語の中で、とりわけ高い集中性をもつ。カドモスの建都、オイディプス家、七将のテーバイ攻め、次世代の英雄たちによる復讐、テイレシアスの予言といった伝承はいずれも、同じ都市を王権と災厄が交わる場所としている。そのためテーバイは、ギリシア神話においてアテナイ、アルゴス、トロイアと並ぶ主要な物語都市の一つである。
古代テーバイはボイオーティアの重要な都市国家であり、歴史時代には同地方の政治的中心の一つとなった。考古資料からは、古代都市の区域に青銅器時代の遺構が存在し、ミケーネ行政文化と関係する線文字Bの粘土板も見つかっている。
神話の層では、テーバイの内外に宮殿、祭壇、神殿、城壁、城門が繰り返し現れる。関連する物語では、包囲戦の最中に市民が神殿へ向かい、アテナ、アレス、都市の守護神に祈る。カドモスの建都伝承では、アレスの竜、アテナの指示、ハルモニアとの婚礼が都市の起源に組み込まれている。歴史上の層と神話上の層は同一ではないが、どちらもテーバイを王城、聖域、戦争の都市として記憶している。
現代のティーヴァは古代テーバイのあった地域に位置し、考古遺跡と博物館展示を残している。古代都市の遺構、青銅器時代の地点、各所に残る古代建築の痕跡によって、テーバイは神話上の地名であるだけでなく、ギリシア中部で歴史的連続性をもつ都市として保存されている。
『カドモス、テーバイを建てる』ではこの場所が語られる。カドモスはデルポイの神託に導かれてボイオーティアへ至り、竜を殺し、竜の歯をまいて、テーバイを建設する。
『七将によるテーバイ遠征』ではこの場所が語られる。テーバイはエテオクレスが守り、ポリュネイケスが異国の軍勢を率いて攻める七門の都市である。
『テーバイ包囲とメノイケウス』ではこの場所が語られる。都市国家の存亡は、テイレシアスの予言、メノイケウスの自発的な犠牲、七つの門の前での戦いと結びついている。
『兄弟の一騎打ち』ではこの場所が語られる。エテオクレスとポリュネイケスはテーバイの城門の前で決闘し、王位争いは兄弟の相討ちによって終わる。
『エピゴノイのテーバイ攻め』ではこの場所が語られる。七将の息子たちは再びテーバイを攻め、テイレシアスがテーバイ人に退避を勧めたのち、都市を占領する。