
ギリシア神話
リュディアは、ギリシア神話の語りにおいて小アジアに置かれる地域であり、英雄、王家、技芸をめぐる物語の背景となる。タンタロスとペロプスの家系伝承、アラクネーの織物伝説、ヘラクレスがオンパレーのもとで奉公した時期を結びつける場所でもある。
リュディアは、ギリシア本土の東、小アジアに位置する。物語によっては、関連する場所がシピュロスやコロポン周辺として示され、またリュディア女王オンパレーの宮廷所在地として語られることもある。単一の都市ではなく、複数の物語が指し示す地域名である。
リュディアは、これらの物語では主に異郷の王国、または東方の地域として現れる。タンタロスは小アジアのシピュロスにいた富裕な王として語られ、その罪とペロプスの蘇生は、リュディアをアトレウス家の遠い起源と結びつける。アラクネーの物語では、リュディアは染めた羊毛、織工、手仕事の名声をもつ土地として描かれる。
ヘラクレス伝承では、リュディアは英雄が奴隷として売られ、女王オンパレーに仕えた地域である。この場所は、ヘラクレスの贖罪の時期に明確な異郷の背景を与えている。彼はここで一時的に自由を失い、屈辱に耐える一方で、女王のために盗賊や悪人を討った。ディオニュソスがテーバイへ戻る物語では、神に従う女信徒たちがリュディア方面から来たとも語られ、この地域はディオニュソス崇拝の外来の一行とも結びつく。
物語上のリュディアは「小アジア」の範囲に置かれ、ギリシア本土とは明確な距離をもつ。ペロプスが父の旧地を離れて「西へ進み、ギリシアに来た」とされることは、リュディアが英雄がギリシア世界へ入る前の東方の背景であったことを示している。ヘラクレスがリュディアへ連れて行かれて奉公する場面でも、この地は遠方の豊かな土地であり、女王の宮廷がある場所として描かれる。
「ペロプス」ではこの場所が言及され、タンタロスはリュディア一帯の王として語られる。ペロプスはここを出発し、のちにエリスへ至って王位を得る。
「アラクネーとアテナ」ではこの場所が言及され、アラクネーはリュディアの少女として描かれる。彼女の織物の技とアテナへの挑戦は、この地域を背景として展開する。
「ヘラクレスとエウリュトス」ではこの場所が言及され、ヘラクレスはイピトスを殺したため神託によって奴隷となるよう命じられ、その後リュディア女王オンパレーのもとへ連れて行かれて奉公する。
「ヘラクレスのオンパレーへの奉公」ではこの場所が言及され、リュディアはオンパレーの支配する土地であり、ヘラクレスが奉公し、贖罪を果たし、悪人を罰する主要な舞台である。
「ヘラクレスの後年の功業」ではこの場所が言及され、ヘラクレスはイピトスを誤って殺したのちリュディアへ売られ、三年後にオンパレーのもとから自由を取り戻す。
「ディオニュソスとペンテウス」ではこの場所が言及され、ディオニュソスがテーバイへ戻る際、彼のそばにはリュディア方面から来た女信徒たちがいた。