
ギリシア神話
ロートパゴス族の地は、オデュッセウスが帰郷の航海の途中でたどり着いた未知の土地で、住民は来訪者にロートスの実を差し出す。この場所が重要なのは、船団を武力で妨げるのではなく、忘却と安逸によって故郷へ帰ろうとする意志を弱める点にある。
物語では、オデュッセウスの船団はキコネス人の海岸を離れたあと、北風に吹き流されて航路を外れ、九日九夜にわたって海上を漂い、十日目にこの土地へ着く。本文はここを、穏やかな気候と静かな草木があり、海岸に近く、淡水を得られる場所として描くだけで、現実の地理上の位置は特定していない。
ロートパゴス族の地は、「オデュッセイア」の帰航の地理における初期の寄港地である。戦場、都市国家、神々の聖域ではなく、旅人に帰郷の思いを捨てさせる周縁の土地として機能する。ロートパゴス族は、オデュッセウスが送った偵察者を攻撃せず、甘い実を食べさせる。その実を口にした者は、もはや船へ戻って報告しようとも、イタケーを思い続けようともしなくなる。
ここでのオデュッセウスは、航海の目的を見失わない人物として描かれる。仲間たちが帰郷の意志を失ったと知ると、彼は彼らを無理に船へ連れ戻させ、船内の腰掛けの下に縛りつけ、ただちに船団を岸から離れさせる。この土地はそのため、帰郷譚における非暴力的な危険を示している。旅人は殺されたり捕らえられたりするのではなく、自ら目的地を忘れてしまうのである。
物語が示すのは、相対的な位置と航海上の経緯だけである。船団はまずキコネス人のイスマロス周辺で痛手を受け、その後、嵐によって本来の航路から押し流され、九日間の漂流を経てロートパゴス族の地に到着する。この土地は海に面しており、オデュッセウスはまず仲間に上陸して水を汲ませ、ついで住民の様子を調べるために人を内陸へ向かわせる。
この場所は、物語の中であえて輪郭を曖昧に保っている。海岸、淡水、内陸に暮らす住民の活動範囲はあるが、都市名、島名、山や川の境界、政治的な帰属は明示されない。「オデュッセイア」の地理における一つの寄港地として、この土地は主にロートスの実と、帰り道を忘れさせるその効き目によって識別される。
「キコネス人とロートパゴス族」ではこの場所が語られる。オデュッセウスの船団は嵐のあとここに到着し、数人の仲間がロートスの実を食べて船へ戻ることを拒む。最後にはオデュッセウスが彼らを強引に連れ戻し、船団は帰郷の航海の次の寄港地へ向かう。