
ギリシア神話
イオルコスはギリシア神話におけるイアソンの故郷であり、彼が継ぐべき王権の地で、アルゴナウタイの遠征が出発した都市でもある。その重要性は、ペリアスによる王位簒奪、イアソンの帰還と王位要求、そしてアルゴー号が金羊毛を求めてコルキスへ向かったことに由来する。
イオルコスは、湾または海辺に近い都市として描かれ、船は港から遠方へ出航できる。市外には山があり、その麓には平野が広がる。幼いイアソンは山林へ送られてケイロンに育てられ、成人後に山道をたどって都市へ戻った。
イオルコスは、アルゴナウタイ伝承において、王権をめぐる対立と遠征の使命が始まる場所である。ペリアスはこの都市で権力を握っていたが、アイソンの子イアソンが帰還すると、本来一族に属するはずの王位を返すよう公然と求めた。ペリアスは権力を手放そうとせず、コルキスの金羊毛を取り戻すことを条件にして、遠方の危険によってイアソンを排除しようとした。
この都市は、英雄たちが集結する場としても機能する。イアソンはイオルコスで船を整え、ギリシア各地の英雄を招集し、浜辺で犠牲を捧げたのちアルゴー号に乗り込む。遠征は抽象的な場所からではなく、簒奪と神託の影に覆われたこの海辺の都市から始まる。
関連する物語では、イオルコスは海岸、港、山地、平野と繰り返し結びつけられる。都市は湾に近く、人々は船の出入りを見ることができる。市外には山林へ通じる道があり、イアソンが幼いころに町を離れ、成人して戻る場面はいずれもこの山と都市を結ぶ道に関わっている。
物語の中で、イオルコスはアナウロス川にも隣接している。イアソンは帰還の途中、老婆を背負って急流を渡り、その川で片方の履物を失う。この出来事によって、彼は「片方の履物だけを履いた者」として都市に入り、ペリアスが神託を恐れるきっかけとなる。
「イアソンとペリアス」ではこの場所が言及される。イオルコスは、ペリアスが権力を握り、イアソンが帰還して王位を求め、金羊毛を持ち帰る任務が提示される都市である。
「アルゴー号と英雄たちの集結」ではこの場所が言及される。イアソンはイオルコスでアルゴー号を建造し、多くの英雄を集め、海岸からコルキスへ向けて出航する。
「アルゴナウタイ、コルキスに到着する」ではこの場所が言及される。イアソンはアイエテスに来意を説明する際、自分がイオルコスの出身であると語り、金羊毛を取り戻すことを故郷への帰還と王位回復に結びつける。
「メデイア、金羊毛を奪う」ではこの場所が言及される。イアソンはイオルコスから遠く航海して来ており、金羊毛を手に入れる目的は、なおペリアスが課した任務を果たすことにある。
「イアソンとメデイアの後の悲劇」ではこの場所が言及される。イアソンとメデイアが金羊毛を携えてギリシアへ戻った後も、イオルコスはペリアスの支配下にあった。メデイアが策をめぐらせてペリアスを死に至らせると、二人はこの都市に留まり続けることができず、コリントスへ移る。