
ギリシア神話
アルゴスの槍の英雄
ディオメデスはテュデウスの子であり、アルゴスの若き王でもある。トロイア戦争では、最も勇猛で、しかもアテナにひときわ目をかけられたギリシアの英雄の一人だった。戦場では冷静さ、苛烈さ、規律で知られ、アテナの助けを受けてアフロディテとアレスに傷を負わせた一方、アポロンには退けられ、人間と神のあいだに軽々しく越えてはならない境界があることを身をもって知った。
英雄戦争, アルゴス王権, トロイア戦争, アテナの加護, 槍と戦車, 夜襲と戦略
槍, 燃えるように輝く盾, 戦車, 青銅の鎧, アテナの導き, トロイア平原
ディオメデスはアルゴスの英雄系譜に生まれ、テュデウスとデイピュレの子である。テュデウスは「七将攻テーバイ」に参加し、勇猛さと荒々しさで名を馳せた。ディオメデスは父の武力を受け継いだが、『イリアス』では、より神意に従い、機を読む人物として描かれる。後代の伝承では彼は「後の七将」の世代にも置かれ、父たちがテーバイ攻略に失敗した後、子らが再び遠征して、前の世代が果たせなかった報復と奪取を成し遂げたことになっている。
トロイア戦争では、ディオメデスはすでにアルゴスの王であった。若いとはいえ、ただ血気で突っ込む少年ではなく、同盟軍の中で単独でも戦線を支えられる指揮官だった。ホメロスの叙述は彼をしばしばアテナと結びつける。女神は彼の勇気を高く評価しつつ、同時に人間としての限度を守らせる。この関係が彼の核心像を形づくる。神に戦場の最前線へ押し上げられても、自分は神ではないことを忘れてはならないのだ。
ディオメデスは神ではなく、英雄であり王である。彼の領域は祭壇の神職ではなく、戦場での勇猛さ、指揮、夜襲、規律、そして神意の境界を見極めることにある。アキレウスの怒りとは異なり、彼の勇猛さは訓練された攻勢に近い。負傷しても痛みに浸らず、敵を追えば途中で止まらず、神を前にしてもまずアテナの禁令に耳を傾ける。
彼を象徴する武器は槍、盾、戦車である。『ディオメデスの武勲』では、アテナが彼の兜と盾をまるで炎のように輝かせ、彼をトロイア平原で敵陣へ迫る一条の火のように見せたと強調される。その光は彼を神格化する飾りではない。むしろ彼の危険さを露わにするものだ。凡人の陣営で一時もっとも鋭い矛先であり、同時に、神が戦局を動かすために差し向けた手でもある。
ディオメデスが最も有名になるのは、トロイア戦争の中盤である。アキレウスが戦いを離れた後、ギリシア軍は大きな圧力を受けた。そこでディオメデスはアテナの助けを受けて敵陣へ突入し、多くのトロイア勢を討ち取る。弓の名手パンダロスは彼の肩を射抜けば止められると思ったが、ディオメデスは矢を引き抜き、パンダロスを見つけさせてくれとアテナに祈った。女神は傷を癒やし、彼の目の前の迷いを晴らして、戦場の人間と神を見分けられるようにしたうえで、神々をみだりに攻撃してはならないと警告し、ただしアフロディテに出会った場合だけは手を出してよいと告げる。
その後、パンダロスとアイネイアスが同じ戦車で迎え撃った。ディオメデスはパンダロスを殺し、さらに大石でアイネイアスに傷を負わせる。アフロディテが息子を救いに来ると、ディオメデスはアテナが許した境界の内側で彼女を追い、刺傷を与えたため、愛の女神はアイネイアスを置いてオリュンポスへ退いた。だが、アポロンがアイネイアスをかばい、何度も彼を退けたとき、ディオメデスはついに追撃をやめ、ほんの一時の神助を自分の神性と取り違えてはならないと悟る。
戦いはそこで終わらない。アレスが自らトロイア軍を助け、ギリシア軍は危機に陥った。するとアテナはディオメデスを戦車に乗せて迎え撃ち、みずから彼の槍を整え、彼は戦神を突き刺した。アレスは苦痛の叫びを上げて戦場を離れ、ディオメデスの名声は頂点に達した。だがその頂点には、同時に警告も含まれている。彼の栄光は勇気と女神の協働から生まれたのであって、凡人がオリュンポスを好き勝手に踏み越えられるという意味ではない。
『イリアス』の別の場面でも、ディオメデスはしばしばオデュッセウスと並んで行動する。彼は夜の偵察や奇襲に参加し、ドローンとレソスの物語では、冷静さ、迅速さ、そして容赦のない戦場判断を見せる。後代の伝承ではさらに、オデュッセウスとともにトロイアのパラディオン像を奪ったことが語られ、彼は正面突破の戦士というより、「知勇兼備」の英雄として記憶されるようになる。
ディオメデスの記憶は、ギリシア本土だけでなく南イタリアにも残った。古代の地誌や地方伝承では、彼はアルゴス、トロイアからの帰途、そしてアドリア海沿岸の世界と結びつけられる。ある伝承では、戦後に故郷を離れ、イタリアで都市を築いた、あるいは英雄として崇敬を受けたともいう。晩年についての語りは地域ごとに一致しない。アフロディテの報復を受けて帰国できなかったとするものもあれば、異郷で新たな栄誉を得たとするものもある。
こうした違いは彼の像を弱めるのではなく、むしろギリシア英雄に典型的な運命を際立たせる。戦場での勝利は、家庭や王権、帰郷の安寧を保証しないのだ。ディオメデスの影響力は主として、『イリアス』が作り上げた英雄像に由来する。勇猛で、賢く、神に愛されながらも、神と人との距離を忘れない。彼は戦士の模範としても、神に近づくほど自制が必要になる凡人の例としても読める。
ディオメデスの性格の核は、冷静な勇猛さである。彼は女神を追い、戦神を刺すことができるが、無分別な冒涜者ではない。アテナの命令を聞き、アポロンの叱責の前では立ち止まることもできる。彼の栄光は、極めて鋭い行動力と、めったにない節度の両方から生まれる。
だから彼は温厚な英雄ではない。戦場では残酷で、迅速で、ほとんど慈悲がない。傷つけば反撃し、欺かれたり矢に撃たれたりすれば最後まで追及する。だが、ただ怒鳴るだけの戦士でもない。彼は神に祈る術を知り、仲間と協力する術を知り、勝利が傲慢に最も近づく瞬間にこそ踏みとどまる術を知っている。ディオメデスを最も記憶すべきなのは、炎が最も激しく燃えるときでさえ、凡人の槍は神の肉に届いても、凡人を神へとは変えられないと認めている点である。